仙人掌

音楽成分多めですが徒然なるままに。

Google Doodle~AIバッハにマジレスしよう回

去る3月21日、音楽史上で最も重要な作曲家の一人と言っても過言ではない人、ヨハン・セバスティアン・バッハ(1685~1750)のユリウス暦での誕生日です。現在用いられているグレゴリオ暦では3月31日となるので、実際の時間としてはもう少し先ですが、日付としては昨日、生誕334年を迎えたわけです。

 

それにちなんで、メロディを入れるとAIがバッハ風に和音をつけて仕上げてくれるというコンテンツがGoogleによって公開されました。

 

 

かなり面白いですね、これ。

AIによる作曲、割とニッチではあるのでまだまだ進んでない分野かと思いますが、技術の進歩とともにどんどん発展していってほしいところです。

 

 

個人的にはすごく画期的だと思っております。

もちろん無料のコンテンツですし、バッハに焦点を当てており、学習曲数も少ないため、ちょっと音楽の勉強をしているとズッコケる場面が出てくるのはしょうがないですが。

ということで貶める意図は一切なく、むしろこれからの進化を願ってケチをつけてみようと思います(笑)

お遊びマジレスですので、誤解なきよう。

 

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ブランデンブルク協奏曲 第5番ニ長調 第1楽章より

ブランデンブルクの一節を入れてみたらこんな風になりました、よさそうで何か違う感じ…(笑)

ハーモナイズ中のTipsによれば、バッハの曲のうち306曲を解析したそうです。

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Tips

偽作とか細かい事情のあるものは置いとくにしても、BWV番号で整理されているのは1087に及びますから、約3割ほどとちょっと少ないかも?

そして完全に形式的にはいわゆる「ソプラノ課題」ってやつですので、対位法と和声法が中途半端に混ざっている感じが否めません。

しかし、概ね和声の定型の進行は何となく出来ているような印象があります。

見極めやすくするため、YAMAHA音楽教室でおなじみ、ドイツ民謡「池の雨」の旋律でいろいろやってみました。

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ハ長調 その1

ハ長調設定なのに最初がⅣ度で始まる斬新さ(笑)

1小節目冒頭からテノールが謎の跳躍を見せてアルトを跳び越すというエキセントリックぶりを発揮。

2小節目頭のⅣ7、和音自体はさもありなんですが、第7音が予備されていないため唐突な印象を与えます。同箇所、テノールはA→G→F→E(連続5度ができるのは内緒)といけばよいものを突然D音に行って並達8度を完成させています。アルトも導音の限定進行を無視していますね。

 

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ハ長調 その2

ちょっと窮屈そうだったので1オクターヴ上げてみました。どちらにしろⅣ度で始まりましたが…。

Ⅳ度→Ⅵ度の進行は禁則ですね。2小節2拍目はアルトとテノールが2度でぶつかってしまっています。おそらくⅡ度の和音を使いたかったのでしょう。かなりごちゃごちゃしていますね。

 

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ハ長調 その3

頭の和音はいったいなんだ…(笑)

おそらくCの音を倚音にしたかったんでしょうね。テノールと合わせて完全に不協和音をぶちかましてますが。

テノールとバスの交差が起こってしまっていますが、イ短調に偽終止しようとしているのは面白いところ。とくに第2転回で第7音重複から反行して解決、とかなり理論的なことをしています。

ループを加味して平行調の属七からハ長調の属七に持っていきたかったんでしょうが、メロディと相容れませんでしたね。

 

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ハ長調 その4

メロディの音価を詰めて、次の楽節も入れてみました。

使っている和音自体はオーソドックスなものに落ち着き、聴こえとしては悪くありません。ここにきてやっと主和音で始まりましたが第1転回形…。

ただ内部ではいろいろやらかしまくっているので、修正が必要な感じ。2小節目、テノールとバスがシンコペーションで和声を解決させていくのは面白いですね。

 

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ハ長調 その5

ロック調でもやってみました。

ハ長調設定にしているのに最初が変ロ長調とはどういうことだ?(笑)

これ、ロック調にすると和声の作り方もポップスっぽくなるんですかね?バッハの曲を分析したバッハ調の仕上がりとはいったい

バッハ調、という部分を気にしなければ、割と一番良い出来だと思います。細かい禁則とかには目を瞑るとして、ウォーキング・ベースのように下降していくバスとメロディ合わせて揺れながらも16分音符の対がマッチしています。最後の終止もⅡ度のドミナント・モーションを用いていて面白いですね。

 

違う調でも挑戦。

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ト長調

これもⅣ度から始まっていますが、終止からのループの流れがちゃんとしております。

ドミナントから内声の装飾を経て主調に解決したのち、バスがⅣ度の属七へと繋いでループしてⅣ度に至る、よくできていますね。繋がり重視で冒頭を第1転回にするとなおよいかも。

 

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ヘ長調

ヘ長調にも関わらず変ホ音が登場します。ミクソリディア旋法を用いたかったのでしょうか?

結局、転調もせず、最終的には導音を使ってきちんと全終止しています。ベースの動きが流れているように見せてトリッキーですね。

 

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イ長調 その1

あえてイ長調に設定せずに、臨時記号イ長調にしてみました。Ⅵ度から始まってのっけから連続5度を形成していますが、最終的にちゃんとイ長調に解決しています。

ハ長調設定でも、ちゃんと臨時記号から調判定をして合わせているのでしょうか。中々に頭が良いですね、こいつ。

 

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イ長調 その2

今度はちゃんと調号をつけました。頭はイ長調ですが、解決の部分が吹っ飛びましたね。

Ⅳ度の属七からⅡ度の属九に推移させようとしているのでしょうか。悲しきかな、ループによってⅠ度が来てしまうので結構違和感があります。

 

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嬰ヘ長調

ハ長調設定その2。調選択では異名同音変ト長調しか選べませんでした。

惜しいですね。きちんと嬰ヘ長調の流れを認識して、嬰ヘ長調で作っております。やっぱり頭がいい。

解決手前でアルトがなぜか導音に降りていませんが、それ手前はⅠ度の第2転回といった終止定型まできちんとできています。まあ、テノールとバスが連続8度してますがね

 

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変ト長調

調号でちゃんとC音に♭がついているのにあえてH音を使うというあれ。Cesくん涙目

分かりづらいですがこれもⅣ度始まりですね。

解決部分の和声進行がいつになくせわしないですが、きちんとⅣ→Ⅴ→Ⅰときていて進行は外していません。

 

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イ短調

調選択に短調の選択はありませんが、メロディを短調にしてみました。

Ⅵ度から始まります。このAIは主和音から始まるなんて月並みなことはしたくないっていうひねくれ者なのでしょうか。

解決部分ではきちんと導音も用いた全終止をしているため、調選択を誤っているわけではないと思うのですが…。

 

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ハ短調 その1

調号なしでハ短調の旋律を入力してみたら、まさかの冒頭が空虚五度…。

メロディの第3音で主和音が姿を現しますが、それも束の間、どちらかというと変ホ長調で認識しているようです。

特に最後は主和音の第1転回形で解決したかと思いきや、変ホ長調のドッペル・ドミナントドミナント、と完全にハ短調では作ろうとしていませんね。これはこれでアリです。

臨時記号は♯しか使わない設定になっているのでしょうか。載せていませんが、変ト長調臨時記号で入力したときも同じような感じで見づらかったです。

 

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ハ短調 その2

今度は変ホ長調の調号設定でハ短調。きちんと主和音から始まっているので、これはハ短調と認識したようです(偽終止をしていますが、ループ前でドミナントの和音を鳴らしているのできちんと繋がります)。

テノールとバスが完全に重なってしまっているのでそこをどうにかしたいですね。解決までの進行は割ときれいにまとまっていると思います。

 

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ホ短調 その1

調号なしでホ短調。冒頭はⅣ度で始まっておりますが、きちんとホ短調で解決しているため、今回はちゃんと短調で認識したようです。

やはりラストでバスにD音の経過音を入れるのであれば、最初は第1転回形でもよさそうですね。

 

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ホ短調 その2

調号ありホ短調。冒頭がⅥ7から始まりました。なぜだ…。

それでもやはり解決はホ短調でしているのでちゃんとホ短調と認識していますね。最後はなぜかドリアのⅣ度が現れます。なぜだ……。

 

おまけ

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フリギア旋法…?

フリギア旋法で入力してみました。まあ予想通りですが、ハ長調で和声付けされていますね。

むしろハ長調で入力していたときよりもちゃんとハ長調しているかもしれません(笑)

解決部分がうまくいっているようでうまくいっていませんね。とくにアルトとバスが連続で7度と9度を形成し続けるのは、かなりつながりとして難があります。

 

 

 

いや~面白いですね。

和声の進行をちょこっと知ってしまっているので、すごく痒いというか喉を掻きたくなるツールです(笑)

すごく和声課題的なナリをしていながら、バッハ作品の学習には対位法的なものを使ったのでしょうか。全部とは言いませんが、そのようなつくりのものがいくつか散見されましたね。

裏側というか製作チームの動画がYou Tubeにありました。


Behind the Doodle: Celebrating Johann Sebastian Bach

え、英語だから分からない…

それにしてもAIという分野、情報の集積と分析、管理ではやはり人間なんかよりも数万倍レベルで上手にできます。

もっともっと情報の蓄積をさせていけば、「バッハ風」を醸す曲がちゃんとできるようになっていくのでしょうね。

創作、という分野にこういう技術が進出してくることを嫌う人がいますが、革新的なものを生み出すためにもこういう取り組みは本当に大事なことだと私は思います。