チャイコフスキーの(交響曲の)打楽器 その2
ちょっと間が空いてしまいましたね。
チャイコフスキーの交響曲の打楽器のを考えてみよう、の続きです。
今回は第1番です。「冬の日の幻想」という副題は第1楽章につけられたものですね。
ティンパニ以外の楽器を採り上げるのが主なので、今回は過去記事のとおり、第4楽章です。
Tchaikovsky: Symphony No.1 'Winter Daydreams' (Karajan)
第1番の基本情報については他に譲ります。
ティンパニ以外の使用打楽器は、シンバルと大太鼓。
結論からいうと、この曲においては強拍を強調するためのもの、以上でも以下でもないように思われます。
しかし、その部分は結構考えられている作りです。
具体的に見てみましょう。
まず大太鼓の初登場のこの部分です。序奏部後半の主題提示に移行していく場面ですね。
ちょうどffの頂点で鳴らされていますが、和音を見るとト長調の属七の和音(第5音省略)の第3転回形です。しかも低音部隊のファゴットとチェロはメロディをやっています。ティンパニは音数の都合で主音を叩いているため、完全な第7音のC音を鳴らしているのは、トロンボーン3rdとテューバ、コントラバスのみです。そしてコントラバスは音域的にも割と中~高音域辺りでまとめているため、この部分の大太鼓は低音の補強として見るべきでしょう。
続いてこちら。
譜例1のすぐ次の場面です。
シンバルもここで初めて登場します。そのまま次の2/2拍子は主部であるため、移行の最終段階です。
この楽章は主調がト長調であるため、最終的にドッペルドミナントを経由してドミナントの和音に落ち着きます。
ティンパニによる補強ができない部分のため、打楽器によって和声の動きを強調しています。特にシンバルによるアウフタクトは、次のドミナントを呼び込むための重要な一発です。
主題提示部に入ったあとの低音楽器による第1主題の確保の部分。
第1主題が弱拍から始まる主題のため、こちらは完全に表拍の補強をしています。
提示部後半の第2主題による小結尾。
大太鼓による頭打ちとシンバルは第2主題の冒頭をなぞっています。
さて。実は用例として出せるのはこれでほぼ終わりです(笑)
展開部では使われず、再現部は型通りに進行するため譜例3のとおりです。
途中、主題の重心を明確にするためのシンバルが現れますが、特に特徴的な使い方でもありません。
譜例1、2のように序奏も回帰し、コーダではいままでの鬱憤を晴らすかのようにこれでもかとばっしゃんばっしゃん鳴ります。
譜例5のとおり、概ねシンバルは高音域のアクセント、バスドラムは低音域のアクセントを担当しています。
このように使い方としては極めてオーソドックスなものです。
まだまだ古典的な佳作の類の打楽器ですね。ここからいろいろな作品を通して着実に効果的な使い方をしていくようになります。
次は第2番を見ていこうと思います。