仙人掌

音楽成分多めですが徒然なるままに。

チャイコフスキーの(交響曲の)打楽器 その1

別にチャイコフスキーの専門家ってわけではないのですが、単純に現在のMyトレンドがチャイコフスキーっていうだけです。

 

ほとんど交響詩であるマンフレッドを除いた6曲の彼の交響曲を打楽器の面から比較してみようと思います。

 

第1番(1866年)…ト短調

  • ティンパニ 2台(第2楽章tacet)
  • シンバル、大太鼓(第4楽章のみ)

第2番(1872年)…ハ短調

第3番(1875年)…ニ長調

第4番(1878年)…ヘ短調

  • ティンパニ 3台
  • シンバル、大太鼓、トライアングル(第4楽章のみ)

第5番(1888年)…ホ短調

  • ティンパニ 3台
  • シンバル(第4楽章のみ、今回の問題児)

第6番(1893年)…ロ短調

  • ティンパニ 3台
  • シンバル、大太鼓(第3楽章のみ)
  • タムタム(第4楽章のみ、任意の指定だけど省略されることはまずない)

 

こうしてみると、チャイコフスキーは打楽器に関して交響曲ではほとんど冒険していないですね。編成がティンパニのみなのは第3番と第5番、というのは過去記事のとおりですが、その他で採用されているのも基本的にシンバルと大太鼓のみ。シンバルも合わせのみで吊り下げ式の指定はなし。使用箇所もほとんど最終楽章の盛り上げ要因といったように推測できます(悲愴については言わずもがな)。

特徴的なのは第4番にはトライアングルが加わること。これによってハイドンの軍隊交響曲から続くトルコ打楽器が勢揃い。

もう一つは、第2番と第6番ではタムタムが採用されていること。悲愴については任意な上にあの死を連想させるタムタムの音色を存分に生かした終楽章の弱音一発。それに対して第2番では終楽章コーダに入る手前の最強音一発。演奏効果としては正反対もいいところです。

 

交響曲以外を含めれば、古典的な編成の打楽器しか使わなかったというわけではありません。

様々な国の舞曲を用いるバレエ音楽ではタンバリンやカスタネットなども使います。

軍楽隊の響きでもある行進曲といった類では小太鼓はもちろん、イタリア奇想曲などではグロッケンシュピールも効果的に使っています。

1812年といったらご存知のとおり、大きな教会の鐘と豪快な大砲は有名です(もはや打楽器といっていいのか分からない)。

打楽器とは別の枠組みになりますが、組曲第2番にて任意ではありますがアコーディオンという管弦楽曲全体の中でもあまり類を見ない楽器を指定しています。

成立時期的に当時最新の楽器だったチェレスタの音色に惚れ込み、バレエ「くるみ割り人形」や交響的バラード「地方長官」で用いたのも有名ですね。

このように決してチャイコフスキーという作曲家は音色に関して無頓着だったのではありません。むしろこれだけ数多くの有名な管弦楽曲が物語るとおり、打楽器も含め管弦楽法において卓越した技術をもっています。とすると、交響曲の編成をここまでシンプルに落とし込んだのは、何よりそのような意図があったと解釈する方が自然だと思います。

 

 

今度、各曲ごとにティンパニ以外の打楽器がどのような役割をもっているのかを考察してみたいと思います。