仙人掌

音楽成分多めですが徒然なるままに。

崖の上のワルキューレ

この前、金曜ロードショーでなんとなーく見た、もう10数年前の映画「崖の上のポニョ」。

初めて見たのですが、トトロ的な子ども向け映画かと思ったら、ところがどっこい、めちゃくちゃ深層心理を揺さぶってくる映画でした。

 

崖の上のポニョ [DVD]

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「死後の世界」がどうだ、みたいな都市伝説的な見解(全てが間違っているとは正直思いませんが)は置いておくとして、びっくりしたのはその音楽。

 

津波が襲ってくる場面はまさにワーグナーの楽劇「ワルキューレ」の第3幕序奏、通称「ワルキューレの騎行」の音楽です。ちなみにサントラのタイトルは「ポニョの飛行」。

 

ポニョの本名が「ブリュンヒルデ」というところから察することができますが、世界観として「ワルキューレ」を下地に置いていることは間違いないようです。

 

公式サイト:http://www.ghibli.jp/ponyo/press/keyword/

宮崎監督がこの作品の構想を練っている最中にBGMとして良く聴いていた音楽は、ワーグナーの楽劇「ワルキューレ」の全曲盤でした。

(中略)

そんな「ワルキューレ」が作品に影響を与えたとしても不思議なことではありません。

と書いてありますが、正直影響どころではないように思います…(笑)

 

フジモトがヴォータンだとすればグランマーレはエルダでしょうか。そして、宗介はジークフリート

姉妹の中で長姉であるポニョ(ブリュンヒルデ)はフジモト(ヴォータン)の言いつけを背く。楽劇だと崖の上に神の力を奪った上でブリュンヒルデを炎へと幽閉(魔の炎の音楽)。次回作の「ジークフリート」で英雄ジークフリートが小鳥に導かれて、崖の上に向かい、人間となったブリュンヒルデを眠りから覚まし、愛を歌い上げます。

 

役柄とモチーフは完全に一致しているようですね。

タイトルが「崖の上の」となっているのもおそらくここからだと思っています。だって、物語のあの宗助の家、崖というよりか岬な気がするので…

 

もちろん「ワルキューレ」を現代風に焼き直した、というには相違点もありますので、あくまでモチーフです。

ある種、「ワルキューレの騎行」を久石譲がオマージュしたのも、その異世界感、死生観としての退廃的な部分を近付けるためでしょう。ただし、子どももターゲットに入れて表向きハッピーエンドな冒険譚に仕上げるための工夫も忘れていません。

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楽劇「ワルキューレ」第3幕冒頭 ―ワルキューレの騎行

「ポニョの飛行」はヘ長調で「ワルキューレの騎行」はロ短調ロ長調)。以前も取り上げた三全音関係ですから、その表現される意図は繋がっていても、醸す雰囲気は全く違います。また、あの有名なポニョの歌も同じヘ長調で、そのテーマが勇壮に変奏がされていますから、津波という災害とポニョが人間の姿で戻ってくるという二極的な演出を華麗に行っています。

 

ジブリの映画、もっと細かいところまで見ていけばいろいろな気づきが得られるんでしょうね。私は残念ながら時々TV放送を見るくらいなので、この程度しか言えませんが…。

にしても、ポニョは久々に考察をするといろいろ楽しそう、と思えた映画でした。

直近だと「天気の子」くらいしかなくて…