チャイコフスキーの(交響曲の)打楽器 その3.5
今回はチャイコフスキーの第3番なのですが、過去記事のとおり打楽器がティンパニしか使われていないため、番外編的な感じです。
タイトルを3.5にしたのは打楽器単体で見てしまうとあまりに書くことがないからです(笑)
ということで今回はさらっと流します。というか、いろいろ調べてみたら、本交響曲全体の特殊性がなんとなく見えてきたので、だったら打楽器じゃなくて全体でまとめたほうが良いんじゃないか、と思ったからなのです。
細かいことは別でいろいろ書いてみようと思います。
過去記事のとおり、本曲はティンパニのみです。
ここにきてすごく古典な響きのするオーソドックスな編成になり、しかも正直に言うと、交響曲で一番打楽器が目立たない曲なのではないか、と思います。
その理由は別記事にて詳しく書きますが、打楽器の項目として先に触れておくべきことして、この交響曲が「対位法」特に「フーガ」への強いこだわりが見える、というのがあります。
【対位法】
音楽で、独立性の強い複数の旋律を調和させて楽曲を構成する作曲技法。コントラプンクト。
【フーガ】
主題とその模倣(応答)が交互に現れる、対位法による多声音楽の形式。遁走曲。追複曲。
(大辞林より)
平たく言ってしまえば、メロディーと伴奏、のように分かれているのではなく、メロディー(同一のものであれ違うものであれ)がいろいろな楽器によってタイミングがずれたりしながら積み重なっていくように曲が書かれている、ということです。
つまり、横の流れが重要であり、瞬間的な炸裂だったりリズムによる伴奏がメインの打楽器はどうしても扱いにくい曲となってしまっています。
(他の要因もありますが)ティンパニ以外の打楽器が使われていない理由としてもこれは無視できません。
この「対位法」的な進行は第1楽章の展開部と第5楽章の第2トリオで顕著です。その部分においてはほぼティンパニは扱われていません。
「対位法」的な進行というのは旋律が複雑に絡み合っていく分、耳で追うのがとても難しくなります。そのため、まず主要なテーマを耳に残さなければいけない提示の部分ではその構成はとてもシンプルになものとなっています。
すごく書き込みが薄いように見えますがサボっているわけではありません(笑)
第1番や第2番と比べても主題が平明になったのには、そういう事情も含まれていると推察します。
もちろん、チャイコフスキーらしさも随所に見られます。特に最後のペダルポイントからの盛り上がりはチャイコの十八番であり、その効果を出すために一番重要なのはやはりティンパニです。
最終的には和音構成となり、ティンパニの乱打が残る終わり方となっています。
なんだかんだで燃えるようなテンションっぷりを見せてくれるのがチャイコフスキーですね。
次は大作、第4番を見ていきます。