仙人掌

音楽成分多めですが徒然なるままに。

交響曲の終わり方のお話~チャイコフスキー編

交響曲の終わり方のお話の続きでございます。

なんかシリーズが乱立してしまっていますが、続けていけるだろうかとちょっと心配。

 

niente36.hatenablog.com

 

統計のおさらい。

  1. みんなでその曲の主音を伸ばして終わり
  2. みんなでその曲の主和音を伸ばして終わり
  3. みんなでその曲の主音を短く鳴らして終わり
  4. みんなでその曲の主和音を短く鳴らして終わり

 悲愴のこともあるので、ここから例外(ex.)の項目もつけます。

 

今回はチャイコフスキーをやります。

本当は時代を順々に、って感じでシューマンとかメンデルスゾーン辺りを取り上げようと思ったのですが、ちょうど今別の観点からチャイコフスキー交響曲を見ていますので、こちらを先にやろうかと。

他にもいろいろやっていくと思いますので、さらっと流しましょう。

 

番号付きとしては6曲ありまして、最後の悲愴については前回も挙げたように例外的な終わり方です。ベートーヴェンとはかなり時代も違ってきていますので、相違点は多くみられるでしょう。

 

 

各曲について 

 

第1番「冬の日の幻想」

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第1番ト短調 第4楽章

 ものすごく音価が拡大された豪勢な終わり方です。

まだこの時期はメトロノーム記号の指定はありませんが、Allegro vivaceからさらにpiù animatoとあるので、かなり快速ですね。

2/2拍子で、完全に1拍分扱いですから、伸ばしではなくと判断しましょう。

 

 

第2番「小ロシア」

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第2番ハ短調 第4楽章

この部分の譜面だけ見てしまうと第1番とほぼ同じですね。

2/4拍子のままですがPresto指定でほとんどalla breveの様相です。

ティンパニの主音残りも同一ですね。終わり方として、割と好まれる手法ですが、チャイコフスキーは時々、最後の伸ばしに打楽器を参加させないことがあります。

運命のようなトロンボーンならいざ知らずティンパニ等の打楽器が無くなると響きがかなり違います。好例としてはバレエ『白鳥の湖』の「フィナーレ」ですね。

ということで伸ばしていて、みんな主音なのでです。

また、これもチャイコフスキーの特徴なのですが、フルートとピッコロを音域的な問題から休みとし、その楽器が通常出せる最低域の主音でまとめる傾向があります。

運命交響曲の時は、ピッコロ等も含めた5オクターブの壁を作りましたが、ここではコントラバスとヴァイオリンの2オクターブの違いしかありません。

最低域の主音でまとめることで、随分と雰囲気が変わります。重く、地に足つくような終わり方です。

 

第3番「ポーランド

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第3番ニ長調 第5楽章

ティンパニの残り方が進化しています。

この曲も最後にPrestoと指示され快速のまま走り抜けます。最低域の主音伸ばしは変わらずで、フルートとピッコロも可能な音域で混ぜています。今回はティンパニが残ったままですね。

主音の伸ばしなのでですが、この曲ではダメ押しのように3発打っています。このような終わり方はほぼ同時期の「スラヴ行進曲」を彷彿とさせますね。

 

第4番 

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第4番ヘ短調 第4楽章

後期三大交響曲、と言われますが作曲時期としては初期と中期の間ぐらいです。4番と5番の間にはスランプだった時の佳作たちである管弦楽組曲があるため、個人的にはここを三大としてまとめるのには抵抗があります。

終わり方としても初期の作品に則ったものです。ティンパニが残り、最低域の主音の残り。その手前の動き方も第3番を踏襲しています。もちろんですね。

 

第5番

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第5番ホ短調 第4楽章

第4番から10年後の作品。第3番と第4番は3年ほどしか間がないので、やはり別の作風へと変化しています。

第1楽章の主題が戻ってくる循環形式で、ティンパニの残りは同一ですが、今回は和音となっています。和音を叩きつける終わり方はチャイコフスキーを崇拝していたラフマニノフ(俗にいうラフマニノフ終止もしくは軍楽隊終止)を彷彿とさせます。

後年になるとこのような終わり方が増えるように感じます。同時期の作品である「眠りの森の美女」、後年の「くるみ割り人形」、後述する第6番の第3楽章など散見されますね。

②の要素を多分にもったといったところでしょうか。勇壮な効果を出す終わり方としてはこれが一番効果的だと思います。

 

第6番「悲愴」

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第6番ロ短調 第4楽章

例外です。ex.としておきます。まあ特に説明の必要はないかと思いますが、ppppという極端な音量指定に加えて、最後に残るのがチェロとコントラバスだけ、というのもすごく変則的ですね。弱音で終わる曲はチャイコフスキー以前にも有名な作品が多くありますが、ここまで徹底的に低音かつ弱音で終わる曲は他に類を見ないと思います。

low interval limit(低音域の和音構成の限界点)を無視したような最低音域での主和音(ロ短調)です。ここまでくるとすごく不協和音的に聞こえますね。

 

番外編

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第6番ロ短調 第3楽章

途中で拍手が来てしまう曲の代名詞、第6番の第3楽章です。ある意味、本来終楽章がもつ役割が前倒しされている、と捉えれば特徴としてはかなり似通っています。

やはりここでもティンパニが残り、伸ばしの後にリズムを刻む軍楽隊終止です。曲が行進曲として書かれているので、第5番よりもその効果が際立ちますね。

 

 

まとめ
  1. 3曲(4曲)
  2. 0曲(0曲)
  3. 0曲(4曲)
  4. 2曲(6曲)
  5. ex.1曲

()内は前回も含めた通算です。

未だ主和音の伸ばしは出てこず。チャイコフスキーの④はベートーヴェンに比べてしっかりとした和音を構築してのものなので、厚さが違います。

第5番なんかは音域が下の方でまとめられているので、なおさらガツンと響くようになっていますね。

 

次回は主音伸ばしの違いを見るために、シューマン辺りを取り上げようかと思います。