仙人掌

音楽成分多めですが徒然なるままに。

チャイコフスキーの打楽器

まあ分かっていたけれどこういうのってどうにも続けれないもので…。

そういえばこんなものあったな、と。

 

今年の秋にチャイコフスキー交響曲第5番というド定番曲をやることになりまして。

どうにもブライトコプフの新版と聞いたけれど、シンバルが入っているとな。

セル指揮のやつに入っているのは知っていたけれど、今だと楽譜に記されるくらいメジャーな説に昇格したのだろうか。ちなみに出版年は2018年なので超最近。

 

やっぱりこれに関して言及している方は多く、説として最初にシンバルを入れた人でたどり着くのはメンゲルベルクだそう。コンセルトヘボウを率いた大指揮者ですが、チャイコフスキーの弟さんから5番の自筆譜を献呈された(見せてもらっただけ?)ようです。ちょっと文献とか細かく当たってないので信憑性は微妙なとこですが。

今度、スコアの校訂報告をがんばって翻訳して読んでみます。いろいろ調べるぞ。

 

 

そのつながりでとても気になることがひとつ。

なぜ5番で使用される打楽器はティンパニだけ(とりあえず慣例として)なのか。

管弦楽曲を多数書いた彼が、ティンパニしか用いないのは一連の協奏曲と交響曲の3番と5番と組曲第4番。

協奏曲に関してはソリストとのバランスの問題が大きく、20世紀初頭以降になるまで多彩な打楽器が含まれないのはある種の慣例としてあったように推測できる。

組曲第4番もティンパニのみだけれど、「モーツァルティアーナ」という副題のとおり、モーツァルトの編曲でありその時代の様相を再現したもの(といいつつロマン的な香りも濃厚だけど)のため、これも除外できそう。

となると交響曲の2曲。古典的な編成をとる2曲とも構造としては全く古典的ではない。

3番については5楽章制をとる上に、終楽章ロンドとしてポロネーズを採用。

5番は3楽章にワルツを採用するとともに、本人も気にする程に歌謡的。

両曲ともに終楽章が落ち着く終わりではない、どころかこれでもかってくらいのチャイコフスキー節炸裂な熱狂ぶりなので演奏効果の面も理由ではなさそう。むしろ悲愴ですら3楽章の行進曲にシンバルと大太鼓を使ってるし…。ちなみに大太鼓はガンガン鳴るけれど、シンバルも最強音とはいえ出番の4発すべてが弱拍という行進曲としてはかなり特殊な使い方。4番ラストの腱鞘炎レベルの打ち鳴らし方とは大違い(笑)

 

舞曲的な面で見てみても、まああれだけ有名どころしかないようなバレエがあるのだから理由としては弱い。

ポロネーズで有名な歌劇「エフゲニー・オネーギン」もティンパニだけでした。これも歌劇の中では唯一っぽい*1。劇音楽はマイナー過ぎて全ては見れていない…まあ超初期の「雪娘」の道化師の踊りとか見ると心配無用なくらい打楽器が鳴り響いていますが。))

ポロネーズについては組曲第3番の終曲の最終変奏にとても壮麗でシンバルやらが響くポロネーズがあるのでこれも違う。チャイコのポロネーズは個人的にこれが一番好き。

 

問題提起しかしていない投げっぱなしジャーマンですが、調べてみると面白そうなので、スコアとにらめっこしつつ、ちょっとこの理由を推測していこうと思います。

 

*1:追記:晩年の歌劇「イオランタ」もティンパニだけですね。